貨幣論

貨幣論とは、日本の経済学者である岩井克人氏の著書になり、1993年に筑摩書房から刊行された書籍になります。

この貨幣論では、貨幣とは何であるのかという事が展開されており、貨幣の価値は信じられているものの、その価値についての根拠はあいまいな部分であることがほとんどで、貨幣は貨幣として流通しているから価値があるのだという自己循環論法でしかないという視点から、貨幣に通じる経済について書かれているものになります。

こうした貨幣の視点から経済社会の全体を捉えており、とくに金本位制などの実際に価値のあるものと貨幣の価値とが連結した状態では、貨幣に対してその交換が保証されている以上は、明確な価値がそこに存在していましたが、現在の管理通貨制度に貨幣の価値の紐づけが移行してからは、貨幣はただ単純に貨幣としての存在でしかなくなっています。

現在の貨幣は、多くの人たちがこの貨幣に対して価値の尺度や保存、交換などの役割を与えることによって、その貨幣の価値が存在しているために、貨幣そのものとしての価値がないという事になります。

岩井氏がこの事を示してから久しく時間が流れていますが、現在のわたしたちの生活の中には、電子マネーという新しい貨幣の取り扱いが生まれ、多くの人たちが電車の乗車やコンビニエンスストアなどでの買い物などに利用しています。

つまり、現金通貨としての硬貨や紙幣というものについては、その物自体には価値はなく、これらの貨幣を媒介とした、物やサービスを売る、買うという人間の欲求の可能性を満たしたものであるという事であるといえるでしょう。

貨幣の特徴は、すべての物やサービスなどに交換をする可能性を与え、また全ての物やサービスなどに交換する可能性が与えられるという部分にあり、その特徴を持っていることにより成り立っているものが貨幣という事であるともいえるのです。

こうした事により、貨幣とは古くは貝殻や穀物、布などの物品貨幣であったものから、その貨幣として有効性、利便性を追い求めていった結果として金属貨幣へと変わっていきました。
これが次のプロセスとして、硬貨や紙幣といったよりその実体を変えていき、現在の形では実体のない電子マネーとして登場することになり、この事によって貨幣というものは、そのものに対して価値があるのではなく、さまざまに形を変化することが可能であり、また時代や状況などによって常にその形を変えていく、その形がより純粋化していった結果として、貨幣そのものを持たなくなる電子マネー、キャッシュレスという形態であるといえるでしょう。